スカイファイターエフ
『鷹戦士F』立ち読み
序 章 鷹戦士

 タカは王である。彼らは群れをつくらず、個々が広大な縄張りを持ち、だれにも仕えない。領空に侵入してきたものは攻撃し、領を奪い合う。

 哺乳類という言葉があるように、猛禽類という言葉があり、タカをヒトが理解することはむずかしい。哺乳類であるヒトは社会という群れを基本とし、支え合いを柱として生きているが、タカは親以外には頼らず、そしてサーカスのトラやライオン、ゾウなどほかの獣のように人間がムチという恐怖で支配することもできない。鷹匠は「タカを主人と思え」と教える。群れもつくらず、強い者にも屈しない彼らは、もっとも非社会的な本能を持っている生き物ともいえる。

 古代ローマの時代からヒトはワシ・タカに憧れて敬意を表し、孤高の王、権力の証として紋章や家紋として誇示してきた。代表的な家紋には、ハプスブルグ家初代皇帝ルドルフに始まった『双頭の鷲』がある。日本の武家社会においても、タカはこよなく愛された。野生と戦国、明日が見えない、生きるか死ぬかという境地は類似する。死ぬ間際になっても毅然としているというタカに、武士は感銘してわが弱さを恥じたという。


 最強、しかしそれは同時に最弱も兼ねている。
 頂点に君臨するその下には、エサとする生き物が豊富にいて、自然という大きな土台があり、彼らに委ねられてタカは生存する。そして彼らは、自らを窮地に立たせるともいえる群れをつくらない肉食。だから、狩りにおいてはつねに一対一なのだ。ときには、自分よりはるかに大きな獲物も狙う。やるかやられるか、一対一の戦いに、つねに勝ち続けていかねば明日を生きていけない。人間が地球を支配するなか、彼らはこのかたくなな生き方を引き連れて、サムライの滅びる美学を追求するがごとく、滅亡への道をひた走っている。
 生存競争においては最弱。彼らのこの精神はまさに、日本人にもういなくなったともいえるサムライスピリットなのだ。


 しかし、そんな彼らのなかで、さらに過酷な生き方をするタカたちがいた。狩りにおいてつねに一対一というファイティングスピリットを追求し、戦うことにわが生き甲斐を見いだし、戦うことで自らを表現する彼ら。

 縄張りを持たず、安住の場所に留まらず、ほかの縄張りの王たちと戦い、力を求めて世界を彷徨う彼ら。その生きるポリシーは、強くなること。戦国時代の剣客のごとく速く飛び、剣のごとく鋭い爪で敵を斬り、明日を切り開く。
 強くなることを誇りに旅という境地で精神を鍛え、日々訓練と修業と決闘を繰り返す。強くなるために生きる、勝つために、生きるために速く飛ぶ、強く蹴る。その翼で、その爪で。
 
だれともなく、そんな彼らのことを鷹戦士と呼んだ。


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